ビジネスを始めるのに必要なマインドセット、キーワードは”しょぼい” (別名リーン・スタート・アップ)
あらためて簡単に自己紹介しますと、
大手金融機関のサラリーマンをへて、ベンチャー企業の創業に共同代表として参画、ベンチャーの上場後に退任しました。
現在自ら新しい事業に取り組むだけでなく、ベンチャー企業投資も行っています。
何をやるにしても自分のやっているゲームは何か、ゲームのルールは何か、を理解した上で取り組むべきだと思っています。
ビジネスのルールの前に、プレイヤーとしてのマインドセットが重要になります。
それはいまできる範囲で商品を提供してみる、ことから始めるということ、だと思っています。
これを続けられればビジネスは進化を続けることができます。
更にいえば新しいビジネスの種には困らなくなると思うのです。
それでは話を始めます、
ビジネスですから、商品を提供することが必要です。
でも始めたばかりですから、いきなり完璧な商品リリースはできません。
“しょぼい”商品でも覚悟をもって始めることです。
言い換えれば『最初から完璧な商品を提供しようと考えない』。
少し油断をすると、この始めるというマインドを忘れてしまいます。
ビジネスが少しばかり軌道に乗ってくるとなおさら忘れてしまいます。
もちろん、こだわりは大切です。
重要なのは、こだわりの商品は既に結果を出している人の戦略ということです。
このことを忘れないだけで我々のビジネスへの取組みが大きく変わります。
SNSやブログでの発信も一つひとつが商品だと考えると同じこと、完璧をめざさないこと、が重要になります。
出さなかったTwitterには何の意味もありません。
出すことでフィードバックを頂けて前に進んでいけるのだと思っています。
すこし話をかえます。
偉そうですがビジネスの本質、についてお話をさせてください。
ビジネスの本質は「はやい、やすい、うまい」だと思うのです。
𠮷野家のキャッチコピーとして有名です。ここにビジネスの本質があると同時に、ビジネスをやる上でのもっとも重要なマインドセットがあると思います。
𠮷野家の目的は世界一の美味しさではなく「はやい、やすい、うまい」です。
𠮷野家は築地で忙しく働く人たちに短時間でリーズナブルなスタミナ食を提供するコンセプトで始まりました。
味だけで世界一をめざしたら3,000円の和牛霜降り牛丼になってしまいます。
できる範囲内での「はやい、やすい、うまい」のバランスでした。
ビジネスを始める“いまは”世界一、日本一である必要は当然ありません。
これからビジネスを始めるのですから世界一、日本一のわけがのありません。
いま提供できるベストを提供する、ということが重要です。たとえ“しょぼいもの”だったとしてもです。
あえて性能の劣ったものを提供しろ、と言っている訳ではありません。
野球を始めるのに大谷翔平選手から教わる必要があるでしょうか?初歩の段階ならそれにふさわしい指導者がいます。初心者は初心者向けの指導の経験者から教わる方がいいと思うのです。その指導者は確実に大谷選手より野球は上手ではありません。でも指導者は大谷選手より初心者のメンタルをより理解しているかもしれません。
野球で例えるとしたら、いま大谷翔平選手になれないからと諦めない。最も大切なことは、バッターボックスに入ること。まずはバットを振ることから始める、そして練習を重ね大谷翔平選手を目指すことです。
我々は経験が少ないなかで始めたからこそ様々な特徴を持っていると考えられます。
経験が少ない=最新の方法を使っている。
予算が少ない=コストをかけずにできる方法を見つけた。
試行錯誤した経験=NGも理解し当たりを発見した。
自分たちは『商品を顧客に知らせることから始める』、これ以上重要なマインドセットはないと思うのです。
じゃあ私はできていたのか?全然できていませんでした。
それでは私がなかなかできなかったわけは何だったか?
一言でいうなら傷つくのが怖かった、からだと思うのです。
世界一、日本一を目指して頑張っている、という方が恰好いいからです。
“しょぼい”商品を売っている恰好悪い自分を認めたくなかったからです。
こだわりの商品を作っていると言った方が恰好いいわけです。
売らなければ売上0です。
ベンチャーに関わっていると“しょぼい”商品でも売らざるを得ません。
それでも不思議なことにそんな商品を喜んで使って頂けるお客様がいるものなのです。
なぜなら今までのものとは違う何か、が必ずあるからなのです。
それは“しょぼい”ことの特徴の一つなのです。
ベンチャーにないものは実績とお金。
だからこそ、重要なことは“覚悟をもってお客様に勧めてみること”と気づいたのです。
このような経験を何度してきて気持ちが楽になりました。(遠回りもしましたが、、、)
まずは“しょぼい”商品からでもはじめる、と宣言する。そして提供したものを改善していきます。世界一、日本一を目指して改善していく。このめざしていく、というスタンスにプライドを持てたらいいのだと思います。
ベンチャーの世界ではこの一連の考えかたを『リーンスタートアップ』といいます。
これは「コストをかけずに最低限の商品をまずはつくって顧客の反応を得て、より満足できる商品にしていくもの」と言われます。
ベンチャーの世界では逆に商品にこだわっていく手法はプロダクト・アウトと呼ばれます。商品自体に特徴があり、他社に対して圧倒的な競争力があれば可能です。
ただし、これは勝者の戦略ですのでスタートアップの段階では採用しにくいです。
基本ほど続けるのが難しいと思います。
少し油断するとこの『リーンスタートアップ』のマインドから外れてしまいます。それは現状維持だったり、プロダクト・アウトを言い訳にしていた方が楽だからです。
経営のうまく行っている経営者にお聞きするとみなさん商品にはこだわっています、と言います。
そんな経営者でも実はしょぼい商品から始めているのです。
(経営者の立場では最初はしぼかった、なんて絶対に言いません。)
改めてビジネスの重要なマインドセットとは何か?
スタートして改善する覚悟です。
たとえ恥ずかしい “しょぼい”ところからでも、改善を続けることです。
私はこれがビジネスをテイクオフさせる一番のドライブになると信じています。
油断をするとこの気持ちを忘れてしまいます。
私自身しょぼいことからでもはじめることを忘れないために、いつも新しいことにトライしようと日々あがいています。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。